国際開発学会東海支部 2007-8年度第2回研究会

 

日時:522(木)18302030

題目:「開発援助のフィールドワークとファシリテーション」

報告:小國和子(会員、日本福祉大学准教授)

 

会場:日本福祉大学 名古屋キャンパス(JR中央線鶴舞駅下車 徒歩3分)

 

報告要旨

フィールドワークは文化人類学の基本的な研究方法だが、関連書の相次ぐ出版に みられるように、隣接領域や実 務において広範に取り入れられている。これに対し人類学内部では、改めてフィ ールドワークを理論的、実践的 側面から見直し、特徴づけようという動きがある。フィールドワークでは、調査 者が対象社会に溶け込む姿勢で 身を投じ、自ら体験を通じて培われる相手社会への共感を基盤に、包括的な理解 を深めることが強調される。重 要とされるのは対象社会のありのままに敬意を払う姿勢である。 この視点は、対象の変化を意図する開発援助のロジックと矛盾すると考えられ、 特に日本の人類学者は援助への 積極的な関与に慎重なあるいは否定的な態度をとってきた。しかしミクロな地域 社会の多くは実情として変化の 渦中にあり、長期的な社会変容の一環として開発現象に目を向け、結果的に自ら も「つながる」人類学者もでて きた。他方で開発援助では、よそ者の権威を弱め、住民の自発性に寄り添うこと が目指されてきた。近年のファ シリテーション志向は、これまでの援助姿勢を転換する契機となる反面、限られ た場における小手先のツールと して矮小化される場も少なくないといわれる。 調査研究のデータ収集を目的とするフィールドワークと実践を通じて参加者の変 化を志向するファシリテーショ ンは、目的においてまったく出発点は異なる。しかし日常的な身体行為としては 「いかに対象社会から発信され る声に耳を傾けるか」を最重視する点で少なからぬ類似点がある。援助における ファシリテーションを対照とし て、調査者を「問いを投げかける変化因子」として見直してみると、フィールド ワークの基本的な姿勢が他者に 促す気付きの延長線上にファシリテーションがみえてくる。報告者は、瑣末で日 常的な問いかけや答えの繰り返 しの意味に着目することで、「よそ者という関係者」の共通課題を検討し、双方 への具体的なフィードバックを 行っていきたい。

 

 *担当幹事連絡先 斉藤(支部長、日本福祉大学教授) chihiro@n-fukushi.ac.jp

 

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